あのねぇ・・・

 目が覚めた。 そこは暗く、何も視界には入って来なさそうな寂れた空間だった。 周りをキョロキョロと見回してみたが、やはり第一印象に違えずそこには何も見出せなかった。 と、不意に若い女の泣き声-それも啜り泣き-が耳に飛び込 …
続きを読む あのねぇ・・・

島流し片道切符 ~イマジノ・スコープ~

 おや、あなた見かけない顔ですね。ああ成程、今日着いたばかりですか、道理で・・・。私ですか?そうですね、もうかれこれ3週間ぐらいになるんじゃないかな。まあここでは日付けなんて関係ありませんがね。お互いこの世界へ来た者同士 …
続きを読む 島流し片道切符 ~イマジノ・スコープ~

ケサランパサラン

そいつは不思議なものの様に僕の目には映った。白くてふわふわした毛玉の様なもの。小さくて手の平の上で転げ回る不思議なもの。人知れず、どのようにかして仲間を増やすもの。何を食べているのかは誰も知らない、どういった行動を行うか …
続きを読む ケサランパサラン

黄昏の街に日は暮れて

 「お久し振りね。何年振りなのかしら?」 それが数年ぶりに再会した彼女の最初の言葉だった。 「さあ、二年か三年か・・・忘れちまったよ。」 実際は忘れようのない年月だが、あの日のことがあるが故にそう言わざるを得なかった。俺 …
続きを読む 黄昏の街に日は暮れて

時間 ~Long Long Time~

 私はロボット。長い長い時の流れの中を動いてきたロボット。いつも一人だけ取り残されてきた。体の中では錆びついた歯車がギシギシと音をたてながら回り、弱り切った燃料電池は流す電気量を減らしてきている。まるで私に反抗しているか …
続きを読む 時間 ~Long Long Time~