「準惑星」はスジが悪い(個人の意見です)

 2006年にプラハで開催された国際天文学連合の総会で、冥王星が惑星から準惑星に格下げされたというのは知っている人も多いでしょう。今回はその経緯を含めて再考し、この「準惑星」という天体の定義が如何にスジの悪いものであるかを見て行きたいと思います。

●なぜ冥王星降格議論が始まったのか

 そもそも20世紀には太陽系の惑星は9つであるとされてきました。太陽に近い順から水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、海王星、冥王星です。それ以外に火星と木星の間には小惑星帯があり、海王星軌道から遠方にはトランス・ネプチュニアン、そしてエッジワース・カイパーベルトと呼ばれる、惑星にはなれなかった小さな天体があるという認識でした。
 ところが望遠鏡が大型化し、さらに撮影もフィルムからCCDなどの電気素子を使ったカメラに変わってくると、今までは写らなかった暗い天体が数多く見つかるようになりました。
 太陽系内の天体は、太陽の光を反射して光っています。その明るさは、ざっくりというと次の式で決まります。

「天体の明るさ=反射率×太陽からの距離の二乗×見かけの面積」
 
 ですから「暗い」というのは、あまり太陽の光を反射しない、太陽からの距離が遠い、または天体が小さいなどが原因になっているわけです。本当は「地球からの距離が遠い」というのもあるのですが、それは一旦忘れても良いでしょう。

 1990年代以降、この「暗い天体」が数多く見つかり始めました。特に、見かけの面積はそれなりに大きいのに、太陽からの距離が遠いために暗い天体が、です。中には冥王星の大きさに近い天体も含まれていたことから、「惑星の数を増やそう」という話もあったほどです。
 そしてエリスという、冥王星よりも大きい天体(現在では冥王星よりも少し小さいと考えられています)が発見されたことで、この論争が天文学者の間で大きくなりました。

●「準惑星」が定義された経緯

 でもエリスの発見ですぐに冥王星が準惑星になったわけではありません。当時、「惑星の定義をどうするべきか」については幾つかの案がありました。
 一番最初に提案されたのは、「基準を示して惑星の数を増やす」と言って良いものでした。次の2つの両方の基準を満たす天体を「惑星」にするとしたのです。
「自己の重力が剛体力に打ち勝ち、静水圧平衡にあると推定される十分な質量を持つ天体」
「恒星の周りの軌道にあり、恒星でも惑星の衛星でもない天体」
 この定義に従えば、冥王星は惑星のままで、冥王星の衛星であるカロンも惑星であると考えられます。正確に言うと冥王星-カロンは二重惑星だということです。
 また小惑星であるケレスも「惑星」に昇格します。他にもマケマケ、ハウメア、クワオワー、セドナ、オルクスなどが候補に挙げられました。
 この定義の下では、太陽系内で太陽の周りを公転している天体は「惑星」と「それ以外」に分けられます。「それ以外」の天体は「太陽系小天体」と定義されました。
 そしてこの定義に従う限り、その後も大量の「惑星」が発見されるだろうということが容易に想定される状況になったのです。

 すると「本当にそんなに惑星の数を増やすのか?」という問題意識が出てきました。そこで出て来たのが、先の2つの基準に追加される形となった、次の基準です。

「その軌道近くから他の天体を排除している」

 これは、その軌道またはその軌道の周辺を1つの天体が占有しているということです。この定義に従えば、小惑星帯にあるケレスは他の天体を排除しているとは言えません。冥王星も軌道の近くに多くのエッジワース・カイパーベルト天体を擁しているために、「惑星」の基準からは外れるというわけです。
 この定義は2006年8月24日にチェコのプラハで行われた国際天文学連合総会にて採決されました。

●「準惑星」のどこが問題なのか

 すでに「宇宙戦艦ヤマト2199」では冥王星は準惑星として登場します。いろんなところで準惑星という言葉は定着しつつあると言えます。そして本来なら存在しないはずの「小惑星」という言葉はいつまでも消えずに残り続けています。本来なら「太陽系小天体」としなければならないはずなのですが。
 でも、この準惑星という定義は非常に問題をはらんだものです。それを説明しましょう。

 何と言っても問題なのは3つ目の基準です。

「その軌道近くから他の天体を排除している」

 すでに「木星軌道上にはトロヤ群があるため、木星は『他の天体を排除している』とは言えないのでは?」という批判も出ています。もちろんこれに対しては「圧倒的な重力によってトロヤ群が存在する場所に集めて、コントロールしている」という反論が出ています。そもそもこの批判自体はこじつけに近い面がありますので、あまり気にしなくて良いだろうと筆者も考えています。
 ですがもっと問題なのは冥王星・カロン系の様に、二重惑星みたいになっている場合です。例えば先に紹介した「宇宙戦艦ヤマト」シリーズでは、ガミラス・イスカンダル系という二重惑星が存在します。また似たような設定の惑星系はロバート・L・フォワードの「ロシュワールド」でも出て来ます。
 これらの惑星はお互いの共通重心の回りを回っていることになりますので、どちらかがどちらかの衛星ではありません。こういった場合「その軌道近くから他の天体を排除している」とは言えなくなります。つまり、もし太陽系外にまで定義を広げてしまうと、ガミラスとイスカンダルは共に準惑星ということになります。もちろんこういう場合、新たに「二重惑星」の定義を作って「準惑星」とは区別するのかも知れませんが、その場合は「衛星」の定義とバッティングすることは目に見えています。
 そういう意味では地球・月系は何とか地球内部に共通重心がありますので惑星・衛星という関係が成り立っていますが、もし月がもう少し大きかったら、地球も二重惑星または準惑星扱いになっていた可能性があります。また「他の天体を排除している」という定義に基づけば、「はやぶさ」や「はやぶさ2」の目的地であったイトカワやリュウグウも地球軌道周辺を回っているため、そもそも地球自体が「他の天体を排除できていないのではないか」という意見もあります。

●太陽系外惑星の定義はどうするのか

 実はこの惑星の定義、太陽系内でしか通用しない定義だとされています。つまり他の恒星系では適用できない定義だというのです。先ほどガミラス・イスカンダル系が準惑星になるかもという話を書きましたが、太陽系でしか適用できないのであれば、ガミラスとイスカンダルは惑星ということになり、一件落着……というわけにはいきません。じゃあそもそも他の恒星系にも適用できる惑星の定義って何よ? という質問には答えられていないからです。

 実は惑星の定義を巡っては他にも大きな問題があります。1つは惑星と恒星の境目の問題です。太陽系の中で最も大きな惑星は木星ですが、他の恒星系では木星よりも遙かに大きな惑星が見つかっています。
 恒星は核融合反応を起こし、自ら光を放っているという事になっていますが、質量が小さくなればなるほど核融合は起こしにくくなります。核融合を起こしていない天体は褐色矮星と呼ばれていますが、この褐色矮星と木星のようなガス惑星の境目についての定義もありません。一応、重水素による核融合を起こすためには木星の13倍以上の質量が必要であるとされていますので、そのあたりが基準になるはずですが。

 もう1つ、元々は恒星の周囲を公転したいたにもかかわらず、他の惑星との重力相互作用によって恒星間空間に放逐されてしまった天体はどう呼ぶのか、があります。現在は「浮遊惑星」または「自由浮遊惑星」と呼ばれています。「宇宙戦艦ヤマト2199」で登場したバラン星などがこれにあたります。ですが、ここに「惑星」という言葉を入れても良いのでしょうか。

 最もしっくりくる定義は、最初に提案された基準ではないでしょうか。

「自己の重力が剛体力に打ち勝ち、静水圧平衡にあると推定される十分な質量を持つ天体」
「恒星の周りの軌道にあり、恒星でも惑星の衛星でもない天体」

 これが最もしっくりきます。これであれば直径や質量だけでほぼ決まります。残りは太陽系小天体。惑星の数は現在よりも大幅に増えますが、そもそも惑星を全部覚える必要はありませんし、「第○番惑星」みたいな数字によるカウントさえ止めてしまえば良いだけです。

●「衛星」の定義で揉めることになる

 もし準惑星のような現状の定義を残すと、今度は衛星の定義で揉めることとなります。現状では衛星に対する明確な定義はありません。せいぜい「惑星の周りを公転している」という程度です。
 そのため木星と土星には観測能力の向上に伴ってものすごい数の衛星が発見されるようになりました。特に土星は環を持っている関係上、小さな氷のかけらまで含めるとものすごい数の天体が周囲を公転しています。どんどん小さい天体を衛星と認定していくと、どこまでが衛星で、どこからが環の成分なのかがわからなくなるのは自明の理です。

 ですから衛星も次のように定義してしまってはどうでしょう。

「自己の重力が剛体力に打ち勝ち、静水圧平衡にあると推定される十分な質量を持つ天体」
「惑星の周りの軌道にあり、恒星、惑星ではない天体」

 そうすれば大きな天体のみが衛星として認定され、小さな天体は太陽系小天体として整理できます。そうなると火星の衛星であるフォボスとダイモスは「衛星」という定義からは外れてしまいますが。

●SFに出てくる「定義に困る惑星」達

 SF作家というのは、いろんなものを考え出すものです。先ほど紹介した「ロシュワールド」の惑星は奇妙な二重惑星の典型例です。ロシュローブを満たしてお互いの大気が行き来するような惑星は他に例がありません。これはそういう世界での出来事を考えるために科学的に結構細かく考えられた惑星です。
 一方、単に舞台として用意された変わった惑星達もあります。例えば田中芳樹の「灼熱の竜騎兵(レッドホット・ドラグーン)」に登場した38個もの地球大の人工惑星は、地球の公転軌道上に存在しています。重力的に安定するかどうかはわかりませんが、この世界が実現すると、地球自体が準惑星になりますね。

 重力的に不安定と言えばラリイ・ニーヴンの「リングワールド」も、かなり風変わりな「天体」と言って良いでしょう。何しろその恒星系にいた異星人が過去に住んでいた惑星を分解して恒星の周りに巨大なリングを作って住居を作れる面積を増やした天体ですので。すでに「自己の重力が剛体力に打ち勝ち、静水圧平衡にあると推定される十分な質量を持つ天体」という基準を満たしていませんので「惑星」とは認められないでしょうけど。

 「宇宙戦艦ヤマト 完結編」に登場した水の惑星アクエリアスは「回遊惑星」などとされていましたが、現在の天文学上の分類で言えば「自由浮遊惑星」となります。ただ、恒星の周囲を公転していない惑星は単純に恒星間浮遊天体ということで良いと思います。そのうちこれを舞台とした物語を書くのもありかな。

ファイヤーボールなんて物理的にありえない

 魔法について考えてみるシリーズ第1弾です。まずは炎に関する魔法としてそれなりにメジャーな「ファイヤーボール」を取り上げてみます。これを実現できるのか? というのが今回のテーマです。

 先ず大前提として、ラノベなどでよくある「魔素」とか「MP」とか、そういうものは現実世界には存在しません。ですからこういうものは「一切無し」ということにします。

「いや、あれは地球とは違う別の世界だから」

 そういう逃げ道を出してくる人がいるかもしれません。ですが、だとしたらエネルギー保存則など、我々の宇宙の基本的な物理法則を無視しているわけですから、別の法則で世界を示すべきです。当然、万有引力の法則が成り立っているかもわからないというのが本来あるべき世界の姿でしょう。でもそういうことをやっている作品はついぞ見たことがありません。面倒くさいからその辺は地球と同じにして、魔法だけを導入するというスタイルをこのシリーズでは良しとしない、ということです。

 さて、話を戻して炎の魔法です。

 火や炎というのは、「可燃物」「支燃物」「火種」の3つが揃ってはじめて成り立ちます。これらについて考えていくことが大変重要です。魔法を使う術者はどの様にしてこれらを準備するのかを考えるわけです。

●火種

 まず「火種」から考えましょう。これは火を付けるきっかけとなるモノを指します。例えば火花。雷のような高いエネルギー。この辺が「火種」の代表格です。まぁこれは術者が何らかの装置を持っていれば良いだけです。その辺は「鋼の錬金術師」のロイ・マスタング大佐のように、手袋に何らかのモノを仕込んでも構いませんし、魔法使いが持っている杖に仕込んでも構いません。ぶっちゃけレーザーで着火しても構いませんので、何とでもなるだろうということで、ここはスルーしましょう。

●支燃物

 次に「支燃物」について考えます。これはモノを燃やす支援をする物質のことで、ぶっちゃけて言えば「酸素」です。地球の場合はモノが燃えるのは酸素があるからで、物質が酸化するときに出るエネルギーで燃え続けているわけです。ですから酸素がなくなると燃えなくなります。ロウソクの炎にキャップをかぶせると火が消えますが、これはキャップ内に存在する酸素が使い切られてしまうためです。
 とはいえ、オープンな場所で使う分には酸素が無くなることはありませんから、基本的にはあまり考えなくても良いでしょう。それに酸素がない場所だとそもそも人間が生きていけません。術者が生きていられないところではファイヤーボールを使う人もいないわけですから、そういうシチュエーションを考える意味もありません。

 ちなみに「酸素以外に支燃物はないのか?」と問われると、「酸化」を「酸素による化学反応」だとするならば「酸素しかない」というのが答えになります。例えば油が燃えるのも酸素による酸化ですし、学校の理科実験で燃やしたスチールウールやマグネシウムも、酸素と化合することによる酸化反応です。残るのもスチールウールの場合は酸化鉄ですし、マグネシウムの場合も酸化マグネシウムです。

 でもですね、酸素以外に広げると「フッ素」も対象になってきます。フッ素は淡黄褐色で特有の臭いを持つ気体として存在する元素で、強力な酸化剤ですし、水素と化合すると4300Kにも達する高温を発します。ただし猛毒で、人体にもものすごく影響がありますので、炎を上げ続けるほどの量のフッ素がある環境では人間は生きていけません。間違っても酸素と同程度の、大気中に20%ものフッ素が存在する環境では地球のほとんどの生物は生きていけません。
 そのため、支燃物についても「酸素」だけを考えれば良いでしょう。

●可燃物

 さて、問題は残る「可燃物」です。これは燃えるモノで、私達の身の回りでは木や紙、油やアルコールなど様々なモノがあります。これらが火種を媒介して酸素と反応し、燃える、つまり火や炎が上がるわけです。

 で、ですね。ファイヤーボールの発動手順をここで考えてみると、ダメなポイントがいろいろと見えてきます。

 ①術者が呪文などを唱えると、②術者の周辺に突如として炎が発生し、③それが指示した標的に向かって飛んで行く、というのが一般的な発動手順です。
 火種はまぁ良いでしょう。酸素も空気中に存在します。では可燃物はどこから現れたのでしょうか? 大気中には可燃物はほぼ存在しません。常に可燃物が存在するような環境ですと、火種が発生した瞬間に爆発したりしますしね。例えばガスが充満している部屋で火をおこすと爆発します。小麦粉などが舞っていると粉塵爆発を起こします。適度な炎が現れる可燃物は自然界の空気中には存在しません。

 すると、術者の呪文によって、どこからともなく可燃物が空中に出現する必要があります。一体どうやって?
 ガス、油、木でも何でも構いませんが、空気中に突如として出現するような物理現象は存在しません。つまり人工的に可燃物をそこに出現させる必要があるということです。

 その方法としては大きく分けると2通りあります。1つはどこかから空間を越えて持ってくる方法。もう1つはその場にあるモノから合成する方法です。

●物質をどこかから取り寄せられるか?

 まずは「空間を越えて持ってくる」のはなかなかにハードルが高いです。これ、どこか離れた場所にあるものを持ってくるわけで、離れた場所と空間を繋げる必要があるわけです。言ってしまえば宇宙における「ワープ」を地球上で実現せよと言っているわけです。さて、空間を曲げるのにどれだけのエネルギーがいるのでしょう? そもそもそのようなことは可能なのでしょうか? 物理学の世界では理論的な研究をしている人たちはいますが、「負の質量を持つ物質:エキゾチックマター」なるものが必要になるなど、かなりハードルの高い内容がつらつらと語られています。
 というか、ファイヤーボールごときのために空間を曲げてでもどこかから可燃物を持ってくるくらいなら、そのエネルギーで相手を倒せよ、と言いたくなります。

●物質をその場で合成できるか?

 では「合成」は可能でしょうか? 空気はその80%が窒素で、残る20%が酸素です。もちろん他にも含まれていますが、窒素と酸素が4:1だと考えて構いません。
 可燃物を気体だとするのであれば、二酸化炭素と水蒸気の元素を何らかの方法で組み替えれば、メタンなどの可燃物質を作り出すことが可能です。というか窒素まで使えば有機物は作れますし、可燃ガスを合成すること自体は可能でしょう。
 またスチールウールみたいなものを可燃物としたいのであれば、さすがに空気中には鉄分子はありません。でも窒素と酸素を使って核融合を行えば、鉄までの元素は作り出すことができます。

 なんだ、できるんじゃないか! と思ったあなたは世界を甘く見ています。まずメタンを合成する方法は、現実世界でも「メタネーション」と呼ばれる二酸化炭素からメタンを合成する手法があります。二酸化炭素と水素を反応させてメタンを合成する方法ですが、二酸化炭素は空気中から調達するとして、水素は水蒸気を電気分解するしかありません。大気中で水蒸気を電気分解? そのような手法は存在しません。そもそもその電気はどこから持ってきて、どの様に空気中に流すのでしょう。雷を使いますか? だったらそのまま雷で攻撃したら良いのではないでしょうか。

 次にスチールウールのようなものを窒素や酸素から作り出すのは核融合反応を起こす必要があります。CNOサイクルというものですが、これには太陽の中心部を越える高温と高密度が必要ですし、発生するエネルギー量が半端ではありません。何しろ超新星爆発を起こす前の恒星のエネルギー源になっている反応ですから。正直、そのまま攻撃に使えるレベルです。できあがったスチールウールを燃やして火の玉を作るくらいだったら、CNOサイクルのエネルギーで攻撃しろよ! と言いたくなります。

●飛ばす意味ある?

 さらに問題があります。ファイヤーボールは燃えている何かを標的に向かって飛ばさないといけません。術者の周囲に現れたものを飛ばすには、加速するためのエネルギーが必要です。どうやって加速するのでしょう? メタンなどの可燃ガスを加速するのはそもそも無理ですし、もし飛ばせたとしても空気中の窒素や酸素に邪魔されて霧散してしまいます。塊のまま飛んで行くのは無理。
 固体や液体なら塊のまま飛ばすことが可能となるかも知れません。ですが、あまりに速いと炎が消えてしまう可能性があります。ロウソクの炎を吹き消すのと同じ理屈ですね。ですからゆっくり飛ばすしかありませんが、今度は重力によって地面に落ちるという問題も生じます。長距離を飛ばすのは難しいと考えるべきでしょう。せいぜい10mも飛ばせれば御の字ではないでしょうか。

 だったら、直接対象を燃やせよ。どこかから火種、可燃物を空間に出現させられるのであれば、対象物周辺に発生させてそのまま燃やしてしまえば良いのです。飛ばすのは効率が悪すぎるだろ。
 むしろ、マスタング大佐のように指パッチンで標的を燃やした方が格好良くないか?!

●炎系魔法は役立たず

 他にも様々な炎系の魔法がありますが、効率面でお薦めしません。またファイヤーウォールのような防御魔法も、何から守ってくれるのでしょうか? 何が燃えているのかにも依りますが、メタンのような気体であればどんなモノでもほぼ素通りです。飛んでくるモノを燃やし尽くす? いやいや、銃弾などは融ける前に炎の壁を突破して術者に襲いかかります。もし銃弾すらも瞬時に融かすレベルの炎を用意したいのであれば、同じ温度であればせめて壁の厚みを数十メートルにするか、同じ厚みならば温度を上げるかです。できれば1万度くらいは欲しい。まぁ1万度の炎は赤くなくて、黒体放射の関係上、主な波長は紫外線領域になりますから、見える色は紫から青、つまり青い炎になっていると思いますけどね。ちなみにメタンで1万度もの温度を作るのは無理です。
 スチールウールのような固体が燃えている? それなら銃弾も防げるかも知れませんが、そもそもそのスチールウールを核融合で合成するための温度は数千万度から1億度に達しますので、その温度で蒸発させなさいよ。

 結論です。現実には炎系の魔法はほぼ役立たずです。見た目の派手さ以外には何もありません。
 ちなみに筆者の作品『やっぱり「物理」が最強!』では、ナパーム弾を「ファイヤーボール」と称して使う描写があります。たぶんこれが最も現実的な解です。

テレパシーなんて無理だよ

 前回は脳移植の話をしたので、今回はそもそもコミュニケーションというのはものすごく難しいという話を。人間同士の言語の翻訳だってかなり難しいし、異星人と会話するなんてたぶん無理。
 もうちょっと言うとテレパシーなんて更に輪を掛けて難しいという話です。

●人間の「聞こえた」とは

 そもそもですね、人間の脳が相手の話を理解する手順を知っておく必要があります。例えばAさん、Bさんの2人の人がいて会話をしているとします。AさんからBさんに話が伝わるというのは、次のような手順を介して行われます。

 1)Aさんの伝えたいことが脳内電流の流れとして構成される。
 2)脳がそれを言葉として発声できるよう、持っている語彙を元に言語化(エンコード)される。
 3)言語化された内容を元に喉が振動して音を発する。
 4)Aさんの喉から発せられた音が空気の振動としてBさんの耳に到達する。
 5)Bさんの耳にある鼓膜が振動し、奥にまで伝えられた振動を有毛細胞を使って分析する。
 6)分析された信号が脳に伝達し、言語化された内容をBさんが持っている語彙に対照(デコード)される。
 7)Bさんの脳内電流の流れとして構成される。

 ざっくり説明するとこの様な手順になるわけです。ですからテレパシーというのは1から直接7を行う行為と言えるわけです。でも問題なのは、脳の電流をどの様に操作すれば1の内容を7に置き換えができるのかわからないという点です。AさんとBさんでは脳の構造が異なっていますので、例え同じ語彙であったとしても、同じ部位の同じ場所に同じ形の脳神経ネットワークが存在するかはわかりません。ですからどこの電流をどのように活性化すれば良いかはわからないのです。

●言語のエンコードとデコード

 では2から6へとショートカットできれば良いかというと、それもなかなかに難しいわけです。そもそもですね、同じ言語を話しているのでなければ、このショートカットは無理です。例えば全く日本語を知らない外国人に対して、いくら丁寧な日本語で話しかけても内容を理解してもらうのは無理です。エンコードやデコードに利用される語彙のセットがまったく異なるからです。

 同じ言語を話していれば大丈夫かというと、これもアヤシイ。例えば同じ日本語を話しているとしても、語彙量が異なると、エンコードとデコードが一致しないのです。例を挙げると、エンコード側が四字熟語や慣用句を詳しく知っている場合、これらを使って自分の頭の中にあるイメージを言語化すると考えられます。一方、デコード側がまったく四字熟語や慣用句に明るくない場合、言語化されたイメージを聴き取れたとしても、それを再度イメージに変換できるかと言われるとかなりアヤシイです。なぜなら四字熟語や慣用句で説明されても、その意味を知らないので。
 これをもう少し別の例で紹介すると、一時期の「意識高い系」と呼ばれる人たちがやたらとカタカナ言葉を使って話している内容を、周りの人が「この人、日本語喋ってるんだよね?」と感じたというのがありましたよね。あれです。

「今日のアジェンダをディスカッションするにあたり、インセンティブがどの様にコンシャスネスをエンパワーするかにフォーカスしよう。」

 こんな感じです。日本語を話しているからといって、持っている語彙が一致していなければ、共通認識は生まれません。

 では語彙まで一致していれば大丈夫かというと、それでも少し問題が残ります。それは生まれてからの経験に根ざした差です。
 筆者は大学で講義をする際に、最初の講義で次の質問をします。

「『雪』と聞いて、最初に浮かんだ言葉を3つ書きなさい」

 これですね、学生からは「雪遊び」「かまくら」「雪合戦」「スキー」「札幌」などの言葉が出て来ます。もちろん「白い」「冷たい」などもあるのですが、どちらかというと遊びに関する言葉が多い感じです。ちなみにほとんど関西出身者ですが、約40人の学生で3つともイメージが一致したのは2人だけでした。つまり「雪」に関するイメージで何かをする場合、イメージの共有をしなければ、まったく異なるシーンを頭の中に浮かべる可能性があるということを意味しています。
 さらに富山出身の知り合いに同じ質問をすると「重い」「しんどい」「飽きる」の3つを出されました。毎日2回の雪かきが必要だそうで、雪は重い、雪かきはしんどい、そして毎日やってると飽きるからのイメージだそうな。

 そうすると、同じ日本人であっても生まれ育った環境によっては、語彙から連想されるイメージが異なる事を示しているわけです。当然、宗教などが絡んでくると、様々なところで文化が異なるため、日本人であれば一致したイメージを持っているなどというのは幻想だということがわかるでしょう。
 そのため、他の言語を母語としている人々とイメージを共有しながら言葉を翻訳するというのは、かなり難しいことがわかります。ニュアンス変換という部分なのですが、単純に辞書に載っているとおりに単語を置き換えて直訳しただけでは、全く意図は伝わらないということです。
 こんな状態で意思疎通などできるとは到底思えません。「テレパシーだったら異星人とも意思疎通ができる」などというのは寝言でしかありません。そもそも同じ地球人類同士でもテレパシーで意思疎通ができるなどというのは不可能事に近いのです。

 ちなみにこの辺の話は2003年11月に開催された「CONTACT Japan 5」にて「辞書を作ろう」という分科会を主催しまして、その際にいろいろと話し合った内容も参考にしています。

●通信のエンコードとデコード

 これまでの話で実のところ、自分の持つイメージを言語化して送るというのはかなり難しいということがわかると思います。ここでテレパシーを使わないにしても、異星人との通信について考えると、更に難しい点が出て来ます。それは、どうやって情報をデータ化して送るか、という部分です。
 まず地球上での通信を例に挙げましょう。ラジオのAMとかFMというのは聞いたことがあると思います。これはAM変調、FM変調をそれぞれ意味しています。AM変調とは、ある信号を送る際に同じ周波数を使い、波の振幅を変化させることで情報をエンコードする方法です。
 一方、FM変調というのはある周波数を中心周波数とし、信号は周波数を変化させて送る形でエンコードしています。つまり、AM変調とFM変調ではエンコードの方法が異なるということです。ということは、AM変調でエンコードされて送られてきた信号をFM変調でデコードをしてしまうと、ただのノイズにしかならないことを意味しています。逆も又しかりです。変調の種類は上記の2種類以外にもデジタル放送で利用されているOFDM変調など、かなりの種類があります。

 それでも地球上では信号をどの様にエンコードしたのかを知っている状態ですから、デコードして信号を元に戻すのは容易いことです。しかし異星人に信号を送る場合はどうでしょう。こちらがどの様にしてエンコードしたのかを伝える方法はありません。ですからきっちりとデコードしてもらえるかどうかはわかりません。
 これはSETIで受信する電波についても言えることです。近年は電波通信のみならず、可視光レーザー通信の可能性も考え、電波望遠鏡で行われているSETI以外に、可視光望遠鏡を利用したOptical SETI(OSETI)も行われています。ですが、そもそも信号を受信できたとしても、どうやってエンコードされたのかを知ることができなければ、デコードのしようがありません。

●言語には暗黙の了解が多すぎる

 もちろんエンコード方法を何らかの方法で知ることができたとしても、そもそも共通語彙などあるでしょうか?できると思うのであれば、イルカのように泳ぐ生物に「歩く」と「走る」の違いを説明できますか?「移動速度の違いで説明できる」というのでは考えが足りていません。大人の早足で歩く速度と、小さい子どもが走る速度は同じくらいになる場合があります。
 大人でも運動不足の人が走る速さと、競歩の選手の歩く速度は同じくらいになりますよね。単純な移動速度だけで「歩く」と「走る」の違いを説明するのは無理です。このように、人間はこれまで生きてきた中で無意識のうちに認識を作りあげているものがたくさんあります。これが語彙のイメージにも結びついているわけですから、これらを「歩く」「走る」という概念を持っていない生命体に説明できるくらいにまで整理しない限り、言葉を説明できたことにはなりません。
 ですからここでもう一度言います。人類はどの様な言語であっても、自分たちの持っている語彙や単語の意味を説明できる状態になっていません。生まれ育った経験の中で暗黙の了解になっている部分があちらこちらにあり、その語彙を知らない知的生命体に我々が使っている言葉の違いを説明できるほどは整理できていません。そのため、もしテレパシーなどがあっても、自分たちのイメージを言葉として伝えることは不可能です。

●もちろん他にも障害はある

 他にも障害はあります。先に紹介した「CONTACT Japan 5」では「色や音を伝える方法を考える」という分科会があり、人間の場合は意思伝達の手法が視覚と聴覚に依っているが、もし音を使わずに香り(化学物質の伝搬)で意思疎通をする生物が相手だった場合、どの様にして音の概念を伝えるのか?なども話題になりました。また地球はG型恒星の周りを公転しているため、我々が可視光線と呼ぶ波長の電磁波を主に放出しています。ですから視覚もこの波長域に合わせて発達しましたが、G型恒星よりも数の多いK型やM型恒星では赤から赤外線を多く放出しますから、視神経もそちらの波長に対応しているはずです。すると、我々が光の三原色で観ている世界を説明するのはなかなか難しい。もちろん写真のイメージを見せること自体は可能かも知れませんが、同じ光景として見てはもらえません。
 逆に香りや味という化学物質をメインとしてコミュニケーション手段としている場合は、梶尾真治氏の「地球はプレインヨーグルト」の世界をガチでやらないといけません。それテレパシーで伝えられるとは到底思えません。

 ですからもしテレパシーを可能とするなら、自分たちの持っているイメージを、その文化的背景まで含めて説明できる状態にし、それを異なる文化で育った異なる構造の脳を持つ人の脳内電流に干渉して電位変動を引き起こす必要があります。しかも人物毎に脳細胞の結合が異なりますので、同じイメージを伝えるにしても、異なる人物には別の電位変動を引き起こさなければなりません。
 異星人が相手ともなると、そもそも基本のコミュニケーション手段すら違う相手に合わせる形で自分たちの世界を変換し、その上で脳があればですが、脳内電流に干渉して……という手順が必要です。そんなことができるとは到底思えないので、テレパシーで意思や意図を伝えるのは無理だというのが、このコラムでの結論です。

動物に人間の脳は移植できるか

 魔法で動物に姿を変えられた登場人物。ファンタジー作品にはよく出てくる設定です。古くはグリム童話の「かえるの王さま」が有名ですが、もっと古くから伝わる世界各地の神話でも似たような話が出て来ます。神様も動物に化けるしね。
 SF作品でも、脳を動物に移植する話が登場します。人間の脳のサイズを収められる動物でなければいけないのに、まれに小型犬に移植する話が出てくるので、それは脳容積的にどうなのよって思うこともあるのですが……。

 このように脳を移植されたり、魔法によって姿を変えられた人物は、一旦はその変化に戸惑います。ですが物語中ではいずれその状態に慣れ、人間の意識を保持したまま、本物の動物さながらの冒険をします。しかしそんなことは本当に可能なのでしょうか。

●「動物への脳移植」は可能なのか?

 まずはSFで出てくる脳移植について考えましょう。

 ミハイル・ブルガーコフの「犬の心臓」などでもテーマとなっていた、人間の脳を犬に移植する場合を例として検証します。本来であれば犬の脳を取り出して、そこに人間の脳を納めたいところですが、これには大きな問題があります。
 人間の脳の容積はだいたい1300cc程度です。一方、犬の脳の容積は犬種に依りますが70~150ccです。この段階でいろいろとアウトです。何しろ犬の脳の代わりに人間の脳を納めようとすると、体積の90%を捨てる必要があるからです。90%を捨てても人間の脳は機能を失わずに済むでしょうか?とてもそうは思えません。ですので、この段階で「犬に人間の脳そのものは移植できない」という結論が出てしまいました。

 でもこれだとあまりにも面白くありませんし、コラムとしてもイマイチです。そこで「人間としての能力を保ったまま犬に脳を移植できた」という前提で話を進めます。

●人間の脳は動物の身体用にはできていない

 しかし、この脳には次々と難題が降りかかります。

 まず周辺を確認するときに使う目、つまり視覚に大きな問題を抱えます。人間は赤・緑・青の3種類の錐体細胞を持っているため、RGBの3原色で世界を識別しています。ところが犬は緑と青の2種類しか持っていないため、GBの2原色でしか世界を認識できません。赤は緑と区別がつかないようです。
 また視力も0.3程度で、世界はぼやけて見えています。この視力では離れた所にいる知り合いを探すというのは難しいでしょう。
 さらにこういう身体に人間の脳を入れるわけですから、人間の脳もぼやけた2原色の世界に慣れる必要があります。ですがあまりにも長い期間この状態が続くと、その間に赤の錐体細胞からの信号を受け取る神経細胞が消えてしまい、いざ人間の身体に戻ったときには色盲を患っている可能性があります。
 逆に鳥類ですと4種類の錐体細胞を持っているため、世界を4原色で見ています。これも苦労しそうです。
 
 次に聴覚です。人間が20~20000Hzの音を聴いているのに対し、犬は65~50000Hzの音を聴いているとされています。可聴域はほぼかぶっていますので、人間が話している内容をそのまま聴き取れるのはメリットかも知れません。ただし、移植された脳が20000~50000Hzの音をどの様にして処理するのかは気になるところです。そんな処理系を脳内に構築しても大丈夫でしょうか。
 これも人間の身体に戻した際、トラブルの元になりそうです。最悪は人間の可聴域外は何らかのフィルターを通すことでカットしてしまうという手もあります。その場合は30000Hzだと言われている犬笛の音が聞こえないなど、他の犬とのやりとりで問題を生じそうです。まぁその前に犬の言葉がわかるのか?という問題もありますが。

 3番目は嗅覚です。犬の嗅覚は人間よりも優れていて、ニンニク臭は2000倍、酸臭ではなんと1億倍も敏感だそうです。こんな信号を脳に放り込まれると、耐えられないんじゃないかな。逆にこの感覚が普通になってしまうと、人間の身体に戻ったときには匂いを感じられなくなるのではないでしょうか。そう、新型コロナウィルス感染の後遺症のような感じですね。これもフィルターで何とかするという手が使えるかも知れません。

 ですが何よりも問題だと思うのは身体コントロールに関する部分です。人間は二足歩行をしていますから、犬のような四足歩行には慣れていません。人間の身体は前肢と後肢の長さが大きく異なり、そもそも四足歩行ができるようになっていません。
 四足歩行に慣れてしまった脳は、無事に二足歩行を行えるのでしょうか。それこそ赤ん坊がつかまり立ちをするところからやるようなリハビリが必要になりそうです。

●魔法なら大丈夫なのか?

 というわけで、犬を例に挙げましたが、他の動物であっても人間の脳を移植してその動物になりすますのはかなり困難だと考えられます。そもそも脳というのは、その身体を前提にした機能を持っているわけですから、身体のつくりが異なる他の動物に移植しても上手く動くわけがないし、動かせるようになると今度は人間の身体へ戻せなくなります。

 というわけで、科学的というか、医学的に移植することは難しいということが何となくわかったと思います。では魔法でその動物に変えられてしまったという設定の場合はどうでしょう?こちらもそう単純ではありません。

 例えば「かえるの王さま」の王さまはカエルとして生きていたのです。となると当然食事もカエルと同じになるはずですが、カエルの食生活はOKだったのでしょうか。これ、犬とか猫でも同じです。
 人間に対して話しかけようとしても、基本的には喉の構造が異なりますのでほとんどの動物は人間の言葉を話すことはできません。また、喉を振動させて鳴くタイプの生物は呼吸を意識して止めることができる、つまり呼吸のコントロールが可能でないと発声ができません。一部の鳥はこれが可能ですが、カエルは無理です。
 というわけで、コミュニケーション上も、食生活などの面でも、人間が他の生物になるというのはかなり問題があると言えるでしょう。

●人間を他の動物に(見えるように)する方法

 しかしこのコラムはこの難問を科学的に何とかするものです。そこで移植は諦め、魔法を使わずに何とか他の動物の姿になる方法を考えてみます。折角なので犬にしか見えないようにする方法を3つ考えてみました。

1)認知阻害
 これは第三者からは認識阻害によって犬にしか見えないという方法です。催眠術などが当てはまります。対象者は人間の姿のまま活動可能ですが、周りからは犬にしか見えません。触感まで含めて五感すべてが認識阻害できれば完璧です。
 ただし、周囲に新しい人が現れる度にその人物も認識阻害状態に置く必要がありますので、その手間をどうやって自動化するのかというロジックが必要です。また、この方法では機械はごまかせないので、完全とは言えません。
 
2)容姿変換
 これは光学迷彩(透明マント)の応用です。光学迷彩はナノマテリアルなどを使って光の通り道を変化させ、それによってそこにいることがわからないようにする技術です。これを応用し、そこに犬がいるように見えるよう、光学情報を変換してしまうわけです。これであれば認知阻害の時の様な問題は生じません。機械もごまかせます。
 ただし、こちらは触りに来られるとばれますし、重量もごまかせないので、やはり完全ではないと考えるべきです。

3)脳チップ
 移植するというコンセプトは活かしつつ、「人間の脳をそのまま」というのは諦めた方法です。デジタルチップに人間の記憶や思考のクセを移植し、それを動物に埋め込むのです。動物の脳はそのままに、デジタルチップを埋め込むだけにすれば、人間の意識と動物の脳は切り離しができますので、その間の接合部分を上手く処理すれば何とかなりそうです。まぁ人間そのものではなくなりますが……。

●次元を増やせば何とかなるかも

 最後に極めつけのぶっ飛んだアイデアも4つ目として紹介しましょう。

4)4次元空間生命体
 人間も含めすべての生物は4次元空間での生命の一部だと設定する方法です。私たちは3次元の生物ですから、次元を1つ増やすのです。
 4次元空間は超空間と呼ばれます。ちなみに2次元で原点から等距離の図形は円、3次元だと球ですが、4次元では超球といいます。
 このアイデアでは、人間を含めすべての生物は同じ姿をした4次元生物の、ある3次元断空間であるとします。3次元の立体に対する2次元の断面みたいなものです。ある断空間で見ると人間なのですが、少しずらすと犬や猫、カエルや鳥など、別の生物に見えるということにするわけです。魔法や進んだ科学技術はこの断空間の位置をずらす作用をすると設定します。
 こうすると、本体はあくまでも4次元生命体ですから、人間の意識を持ったまま犬になれます。また犬を人間に化けさせても性格や行動は犬のままですので、動物を人間に変化させる系の物語でも使えます。
 ついでに言えば、4次元生命体の意識がリセットされることにすれば、輪廻転生で来世は犬だとか、前世はカエルだったとかという設定にも応用可能です。前世はシリウス星人だったとかいう電波な話にまで対応させるかどうかは、作家次第ですけど。

●参考文献
 ・「色覚を考える展(https://www.color.t-kougei.ac.jp/content/file/collab_g180514.pdf)」 東京工芸大学
 ・「鋭敏なのは嗅覚だけじゃない! 犬たちの超感覚(https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/20140617/403054/)」 ナショナル・ジオグラフィック日本語版
 ・「犬の感覚器官(https://www.policedog.or.jp/chishiki/kankaku.htm)」 公益社団法人 日本警察犬協会
 ・「4次元の不思議な世界を覗いてみよう!!(https://www.tsuyama-ct.ac.jp/matsuda/eBooks/%EF%BC%94jigen.pdf)」 津山高専
 ・「4次元世界の動物の形を考える(https://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/~kyodo/kokyuroku/contents/pdf/0870-19.pdf)」

地球にケンタウロスは存在しない

 前回はタコ型の火星人を考察しましたが、今回はファンタジーで出てくる生物が地球上の自然界には存在し得ない理由を説明します。特にケンタウロスとかペガサスあたりが対象になるかな。

 さて、神話やファンタジー作品に出てくるケンタウロスと言えば半人半馬の生き物です。上半身が人間で、下半身が馬というのが定番です。これ、ちょっと考えるとおかしいことに気が付くはずです。上半身は人間ですので2本の腕を持っています。一方、下半身は馬ですので4本の脚があります。合計すると6本ですよね。

「何がおかしいんだ?」

 そう思う方もいらっしゃるでしょう。これ、実は大変おかしいのです。そこで、まずは人間について考えてみましょう。ちょっと長くなりますがお付き合い下さい。

●そもそも「人類」とは?

 今の人類は系統樹分類から行くと、次のようになります。

 真核生物-動物界-真正後生動物亜界-新口動物上門ー脊索動物門-脊椎動物亜門-
 四肢動物上綱-哺乳綱-真獣下綱-真主齧上目-真主獣大目-
 霊長目(サル目)ー直鼻猿亜目-真猿型下目-狭鼻小目-
 ヒト上科ーヒト科-ヒト亜科-ヒト族-ヒト亜族-ヒト属-ホモ・サピエンス

 例えばアウストラロピテクスは「ヒト亜属」まではホモ・サピエンスと同じです。イヌは「真獣下綱」までは同じで、その先は「ローラシア獣上目-食肉目」に属しています。
 人類は2本の腕(前肢)と2本の足(後肢)を持っています。イヌは4本足ですが前肢と後肢を2本ずつ持っているという点では人間と同じです。これが哺乳類(哺乳綱)と同列のところに位置している両生類、は虫類、鳥類であっても、前肢2本・後肢2本という組み合わせは変わりません。鳥の場合は前肢が翼になりました。
 これは「四肢動物上綱」というところに属している生物の特徴です。四肢動物以外の「脊椎動物亜門」には魚類があり、四肢動物の前肢は魚類の胸びれが、後肢は腹びれが変化して出来たものだと考えられていますので、「脊椎動物亜門」に属する生物は基本的に「四肢またはそれに相当する部位を持つ」生物だと言えます。

●「六肢動物」という分類はない

 一方、ケンタウロスはどうかと言えば、四肢動物が前肢と後肢の2対しか持っていないのに対し、3対を備えています。つまり生物としては六肢動物という扱いです。ちなみにペガサスも馬の姿の2対の脚と、1対の翼ですから、これも六肢動物と言えるでしょう。

 さてここで大きな問題が出て来ます。四肢動物は哺乳類だけでも5000種以上、四肢動物上綱全体では3万種以上の種が存在しています。すでに滅んでしまった種も含めるともっと多くなります。魚類まで含めれば6万6000種以上が存在しています。
 一方、今の地球に六肢生物がそれだけいるでしょうか?少なくとも6本足の猫っぽい生物がいるとか、6本足のカエルっぽい生物がいるという事実は今のところありません。また進化してきた道筋のわかる生物が化石として発掘されたという話もありません。つまり同じ系統樹分類に属する生物がいないわけです。そのため、地球上にはケンタウロスやペガサスが生物として進化してきて存在するという道筋はありませんし、過去にも存在していませんでした。
 もし存在させるならば、人工的に造るしかありません。それはそれで脳の構造とかをデザインするのが大変そうですが。

●「異世界生物」の作り方

 というわけですので、作中にどうしてもケンタウロスやペガサスを登場させたいのであれば、作品の整合性を考えれば、次のどれかに該当させるのが良さそうです。

1)完全なファンタジーとして世界を構築する。その際、科学考証や現代科学によるチートは一切入れない。
2)人工生命体として造られたという裏設定を用意しておく。そうすればちょっとした科学考証を入れてもクリア可能。
3)登場してもおかしくないだけの世界として、世界そのものを構築しておく。

 ではそれぞれを詳しく見ていきましょう。1)についてはそもそも物理法則なども地球とは変えてしまうと良いでしょう。何しろファンタジーですので、科学の法則などガン無視です。当然のことながら現代の科学技術に関する知識は一切役に立たないくらいの方が良いので、理系の人物が転生したり転移したりしても、科学技術の知識を使ったチートが一切行えない、っていうくらいが望ましいです。うん、知識が全く通用しなくてあたふたする主人公というのも面白そうです。そのうちそういう設定の作品を書いても良いかもしれない。

 2つ目のタイプは、例えば「太古に栄えた文明が人工的に造った生命体である」ということにすれば、全部クリアできます。ただし、滅びずにキチンと残り続けるための歴史とか、さすがに全く進化しないというのもアレなので、「昔と比べるとこんな風に変わった」というエピソードやセリフを散りばめることによってよりリアリティーが出ます。

●「異世界」そのものを作り上げよう

 3つ目は完全に新規で世界設定から作り上げる方法です。この際、人間も同時に出すのであれば、四肢動物と六肢動物が同じくらいの数出てくる世界としておくのが望ましいと思います。または完全に六肢動物しかいない世界に四肢動物の主人公が紛れ込んでしまうというのも手ですね。その場合、主人公の境遇はかなり特殊になるでしょう。

「あいつは脚が2本しかない可哀想なヤツだ」
「脚が2本しかないのに、どうして立っていられるのか」
「脚が4本ないなんて気持ち悪い」

 こういうことを言われる設定が必要です。もしくは同じ世界に「腕が4本で足が2本」の生物を出すのも良いでしょう。その代わり、やはり次のように言われるわけですけれどもね。

「あいつは腕が2本しかないぞ。突然変異体か?」
「腕が2本だと(4本あるのが基本の道具ばかりなので)生きて行くのしんどいよな」

 では、六肢動物の世界があるとしたら、どこにあるのでしょうか。もしそれを人工生命体としてではなく、自然に進化してきた生命体として設定したいのであれば、可能性としては2つです。

●「異世界」はどこにある?

 まず1つ目。地球のパラレルワールドです。生命発生の初期の頃、何十億年も前、もしくはカンブリア爆発の起こった6億年くらい前に分岐したパラレルワールドという設定です。ですから遙か昔に分岐して分かれた世界線の地球と言い換えても構いません。そこでは四肢動物は絶滅してしまい、六肢動物のみが生き残っています。そのパラレルワールドの地球では翼が2対で脚が1対の鳥類、逆に脚が2対で翼が1対の鳥類がいます。ネズミなども前肢、中肢、後肢と脚が3対あります。カエルもぴょこぴょこと跳ねるための後肢以外に、2対の脚を持っているはずです。哺乳類などの四肢動物が六肢動物に置き換わっている以外は、地球と同じ様な生態系がそこにはあると考えて良いでしょう。

 2つ目は地球とはまったく異なる、宇宙のどこかにある惑星です。その大きさや重力、空の明るさや海の広さなどは、地球とまったく異なります。もしかしたら地球に似たような環境の惑星があるかも知れませんが、異なる環境の惑星の方が設定を造りやすいかも知れません。例えば、地球よりも大きく、そのために重力が大きい惑星である「スーパーアース」を考えてみます。最大で質量が地球の10倍くらいの大きさを持っている惑星です。
 例えば地球の10倍の質量を持つ惑星で考えてみましょう。構成している元素とその比率が地球と同じ場合、この惑星の直径は地球の約2倍です。すると、質量が10倍で直径が約2倍ですから、表面重力は地球の約2倍です。そのため、この惑星では地球よりも大気圧や海洋での水圧が高くなります。
 この惑星で生き残るためには、どの様な能力を持つ生物が有利でしょうか。地球と同じ様に生命が海で発生したとすると、捕食する側、される側ともに速く泳げる方が、同じ速さであれば高い機動性を持つ方が有利です。地球の魚の場合、速さは尾びれの形状と大きさ、機動性はひれの位置や形状が関係しているとされています。もしかしたらひれの数が多ければ、様々な形状のひれを持つ事によって機動性を上げやすくなる可能性があります。水圧が高く、そのために密度の高い海水中では機動性の高い生物の方が有利になるかも知れません。仮に「ひれの多い方が有利だった」という設定をしてしまえば、六肢動物に至る道筋を作ることができます。

 実は「国立博物館物語」の中に、「ケンタウロスを発生させるため、六肢動物をコンピューターシミュレーション上で進化させる」という話がありました。結末についてはここでは触れませんが、6本の脚を持つ様々な動物の姿が描かれていますので、ご参考下さい。

●おまけ

 ここまでは「六肢動物は地球上にはいない」という話でしたが、実は6本の脚を持つ生物であれば地球上にも存在します。もっと言えば8本の脚を持つ生物などもいます。6本脚の生物というのは昆虫類です。

 真核生物-動物界-真正後生動物亜界-脱皮動物上門ー節足動物門-六脚亜門-昆虫網

 これを見てもわかる通り、「新口動物上門」に属する人間や哺乳類と比べると、「上門」レベルから異なる生物群であることがわかります。ですが、例えばカマキリの仲間は2本の前肢(カマ)と4本の移動用の脚を持っていることから、「ケンタウロスっぽい生物」と言えなくもありません。
 ただし脊椎動物と同じ脳はありませんので、まったく異なる生物であるという認識が必要です。はしご状神経系から進化した脳っぽいものはありますが、何しろ頭がなくなっても生きていますから。でも脚と腕の動かし方などは、ケンタウロスの設定を行う際の参考にできるでしょう。

●参考文献
 ・「遊泳・飛翔生物の運動の非定常性と波動性について」 劉浩,バイオメカニズム学会誌,Vol. 34, No. 3 (2010)
 ・「国立博物館物語」 岡崎二郎著、小学館刊
 ・「レジェンド」 神無月紅著、小説家になろう
 ・「異星人の作り方」 CONTACT Japan編
 ・「科学 IN SF」 ピーター・ニコルズ著、小隅黎監訳、東京書籍刊

古典SFの火星人はタコではない

 火星人が地球に攻めてくるという内容で有名になったハーバート・ジョージ・ウェルズ(H.G.ウェルズ)の「宇宙戦争」という作品。ここで登場した火星人は大きな頭を持ち、手足がひょろひょろのタコのような姿で描かれていることで有名です。
 ですが、実はタコをモデルにしたわけではないということはご存知でしょうか?あの姿は人類を火星に適応させ、遥か未来にはどのような姿になるかを考えたものなのです。

 そう聞くと「え?未来の人類はタコみたいになるの?」と驚かれる方もいるでしょう。今回は、火星人は一体何故、どのような理由であのような姿になったのかを追いかけてみましょう。

●火星に発見された「運河」

 火星人が地球に攻めてくる「宇宙戦争」という作品が出版されたのは1898年のことですから、20世紀になる直前です。
 ストーリーは、ある日、火星表面を観測していた天文学者が火星表面での発光現象を発見します。その後、連合王国(イギリス)各地に、3本足の機械が現れ、人間を襲い出すというストーリーでした。この機械に搭乗していたのがタコのような姿の火星人だったのです。
 実は「宇宙戦争」が発表される少し前、1877年に火星が大接近した際に、ミラノ天文台長だったイタリア人天文学者ジョヴァンニ・ヴィルジニオ・スキャパレリが口径22cmの屈折望遠鏡で火星を観測し、その表面に筋状の模様があることを発見しました。その後、彼は1879年、1881年の観測結果と合わせて、火星の表面にはイタリア語の「canali(溝、水路)」があると発表しました。彼の意図としては自然地形であるというつもりだったようです。
 ところがこれが英語では「canals(運河)」と翻訳されてしまったことで、人工的な運河があると勘違いされてしまったのです。これが火星に知的生命体がいるとされる発端となりました。
 「宇宙戦争」が発表される直前の1895年には、「火星の運河」に魅了されたアメリカの天文学者パーシバル・ローウェルが、観測結果をまとめた書籍「Mars」を出版。1906年に出版した「Mars and its Canals」には火星の表面にある運河は火星人によるものであるとしていました。
 そうなると火星に運河を作るような知的生命体はどの様な姿をしているのかということに注目する人も現れます。19世紀末から20世紀にかけての時代というのは、そういう話題が宇宙や科学の好きな人々の間で盛り上がっていた時代でもありました。

●太陽系のでき方(20世紀初頭の理論)

 さて、では火星人の姿というのはどの様に想像すれば良いのでしょうか。人間と同じ姿でしょうか?「宇宙戦争」では異なる姿として「科学的に考えた結果」が掲載されました。その想像を行う際に重要となったのは、太陽系がどの様に進化してきたか、です。
 当時の太陽系形成理論は今のものとは異なります。現在は太陽を取り巻くガス円盤内にある塵がくっつき合って微惑星となり、それらが合体を繰り返して原始惑星ができたと考える京都モデルと、その修正版であるニースモデルやグランド・タック・モデルが主流です。京都モデルは林忠四郎を中心としたグループが1970年の論文を皮切りに研究を重ねて確立しました。ですから1900年頃にはまだ存在していなかったのです。
 では当時の太陽系形成理論はというと、ドイツのイマヌエル・カントやフランスのピエール=シモン・ラプラスが18世紀に唱えた星雲説(日本では星霧説とされたこともある)が中心でした。原始太陽系を形成するガス雲から惑星が形成されたと考えていますが、太陽からの距離が遠い場所から星雲がリング状に分離していき、1つのリングから1つの惑星が生まれるというものでした。外側の惑星から順番に冷え固まってできていくという考え方です。つまり地球と火星を比較すると火星の方が先に冷えてできたので、知的生命体による文明が発達しているとすれば、地球よりも進んでいるはずだと考えられていました。逆に金星は地球よりも後に冷えて固まったので、まだ太古の恐竜時代くらいかもしれないと考えられていたのです。
 金星を現在よりも数千万年から1億年程度前の恐竜時代くらいだと考えていたということですから、逆に火星は数千万年から1億年くらい先に進んでいると考えること自体、不思議なことではありません。すると数千万年後の人類の姿を想像する必要があります。それこそ400万年前に発生したアウストラロピテクスと現生人類であるホモ・サピエンスとの差など、小さなものだと思えるほど変化している可能性があるわけです。

●火星人の作り方

 そこで人類の姿がどの様に変化してきたのかを追いかけ、それが未来にまで続くとするとどの様な姿に変化するかを考えました。
 まず人類は脳の容積が進化に伴って大きくなってきたことから、進化が進むにつれてさらに頭部が大きくなると想定しました。身体の表面は猿人の頃は体毛に覆われていましたが、徐々に体毛は薄くなり、そもそも体毛の生えない部位も増えています。そのことから遙か未来の人類は完全に体毛がなくなると考えるのが良さそうです。また脳の放熱を考えても、熱を保持する髪の毛も邪魔者でしかありません。余談ですが、頭のはげている人は「未来人的である」と言い換えることができるというネタもあります。
 では身体の形状はどうでしょうか。縄文時代や弥生時代と比較すると、重たいものを持つ必要も無くなり、移動も車などの機械を利用することが増えましたから、腕や足の筋肉量は減ってきています。つまり腕や足は細くなってきています。火星の場合は重力も地球と比較すると弱いため、身体を支えるにはもっと細い足でも困らないはずです。
 消化のための内臓、胃や長い腸を納めている身体も、消化の負担が減るともっとコンパクトになると考えました。食べ物を咀嚼するための歯も、どんどん柔らかいものを食べるようになっていけば、不要になるかもしれません。少なくともものを噛みきるのに使う犬歯については、今の人類は過去の猿人に対して鋭さが減っていると考えて良さそうです。
 どうでしょう。大きくなった頭、コンパクトになった胴体、細い腕と足。口には歯もなく全身がつるつる。そのように進化していくはずという考え方が「火星人はタコのような姿をしている」と想像されたベースとなる理屈です。

●想像上の火星人はたくさんある

 ただし、「宇宙戦争」で採用された火星人の姿はタコに似たような姿をしていましたが、別の姿を想像していた人もいました。火星の大気は地球と比べると大変薄いことがわかっていました。ですから薄い空気を大量に吸い込むため、胴体の中でも肺だけはコンパクトにならず、大きくなったのではないか。また音を聞き取りやすくするため、耳は巨大化しているのではないか。
 頭が大きく手足は細いものの、大きな肺の入った胴体と大きな耳を持つ、頭と胴体がデブで、手足がひょろひょろの火星人なども想像図が描かれています。
 ですが、その他のSF作品に出てくる火星人はほとんど地球人と同じ姿をしたものでした。ある作品では火星の姫君を助ける地球のヒーローというストーリーの都合上、タコ型の火星人を助ける地球人というのは想像しにくかったのでしょう。またタコ型の異星人と一緒になって怪物と戦うというストーリーも、読者には想像しにくかったのかもしれません。火星人に限らず、その後のSF作品で描かれる、地球人と仲間になって戦う異星人は「地球人と似ているが少しだけどこかが異なっている」という姿が多いのも、視聴者の共感を得やすいことを意識している可能性があります。

●異星人とのコミュニケーションは難しい

 実のところ、人間は人間型をしていない生物に共感できるかと言われると、かなり難しいものがあると考えるべきでしょう。人間同士がコミュニケーションを取る場合、言葉によるバーバル・コミュニケーションからの情報は約20%に過ぎず、身振りや手振り、表情や声のトーンなどのノンバーバル・コミュニケーションの方が圧倒的に優位だという研究もあります。このことから、似たような姿をしている者同士の方がコミュニケーションを取りやすいと無意識のうちに選別している可能性があります。
 例えばクジラやイルカは声などによるコミュニケーションを取っているとされていますが、人類と同じ知的生命体であるとみなしているかと言えば微妙でしょう。逆にアリやハチなどの社会性昆虫も相当に高い知的活動を行いますが、知的生命体であるとみなしているかと言えば、これも微妙でしょう。彼らは人間の姿とあまりにも異なるため、人間の活動を基準で考えてしまい、彼らの活動を知的とみなせていないだけなのかもしれません。
 もっとも「何を以て知的であるとするのか」「知的生命体の定義は何か」は議論が必要な命題です。これについては他の機会で書こうと思います。

 いずれにせよ、もし遙かな未来の物語を書こうとするなら、人類の進化の行き着く先の姿を想像して書くべきでしょう。何万年も先の未来で、しかも今とは異なる科学技術文明を発達させた人類の姿は、今の私たちとは似ても似つかない姿に変貌している可能性もあります。タコのようになっているかはわかりませんけど。

●参考文献
 ・最新科学論シリーズ10「最新太陽系論」 矢沢サイエンスオフィス編、学研刊
 ・「天文地学講話」 横山又次郎著、早稲田大学出版部蔵版
 ・「火星に魅せられた人びと」 ジョン・ノーブル・ウィルフォード著、高橋早苗訳、河出書房新社刊
 ・NHK市民大学「宇宙の科学史」 講師:中山茂、NHK出版刊
 ・NHK人間大学「宇宙を空想してきた人々」 講師:野田昌宏、NHK出版刊
 ・「地球外文明の思想史」 横尾広光著、恒星社厚生閣刊
 ・天文学事典(https://astro-dic.jp/)

第63話 ベテルギウス爆発?

遠くへ行っていたのですが、そろそろ自宅に帰ろうという話になり、ホテルで荷物をまとめます。一緒に居た人たちにも

「じゃあまた、どこかで」

と言って出立。夜道をとぼとぼと歩いて自宅に戻ります。今思うと、あの道は新御堂筋沿いの歩道で、丁度、緑地公園方面から桃山台の駅に向かっての上りぼところですね。それも豊中側の。

で、空の星座を眺めながら歩いていたら、いきなり空が明るくなりました。どうも何かが爆発したようです。その時に頭に浮かんだのがオリオン座のベテルギウス。もしかしたら爆発したんじゃないかと思い、夜空を見上げるのですが、いきなり明るい光にさらされたおかげで目がおかしくなってしまったようです。空が真っ暗で何も見えないのです。

「オリオン座を確認しなきゃ」

と目をこすり、目を細めと格闘しているうちに、目覚ましの音で起こされました。うーん、あれは何だったんだろうなぁ…気になる。

たぶんベテルギウスが気になったのは、昨日の夜、ベテルギウスの明るさが戻ってきてるなぁ…というのを観ていたからかも知れません。

NTT R&Dフォーラム2018(秋)

今日はNTTの武蔵野研究所で行われていたフォーラムに行って来ました。要は、NTTが研究している技術を、研究者自らが説明してくれるという一般公開みたいなもんです。これ、もちろん招待が必要で、勝手に行って見られるわけではありません。

というわけで、私は毎度の事ながら、NTTコミュニケーションズの方に誘っていただいて行ってきました。

今回は、複数の人間で喋っても、特定の人の声だけを抽出する技術とか、向こうが透けて見える電池とか、そういうのを見てきました。電池の方はどうやら、昨日のトレたまで紹介されたようで、人が結構集まっていました。私もネットのニュースで読んでいましたので、実物を触らせてもらい、且つ、写真も撮らせていただきました。

透けてるだけでなく、曲げられるし、面白い技術です。しかも充電可能な二次電池。もう少し透明度が上がると、もっと楽しくなりますね。

 

今月の歩数:254,547歩
今日の体重:72.1kg

第62話 晩ご飯

相方と久しぶりに外食。旅行先で雰囲気の良いレストランに入り、注文をします。

メインが洋風と和風があり、相方は洋風、そして私は和風を注文。それだけでは足りないので、アボカドサーモンサラダやなどの一品物を3品ほど頼みます。

相方と、次はどこに行こうかと話をしていると、先に一品料理が運ばれてきます。なかなかインスタ映えしそうな盛り付けにテンションが上がります。
そのうち、メインがやって来て、「おお~」とか言って、お互いが頼んだモノをまじまじと見てみます。すると、残る一品料理も全部運ばれてきて、テーブルの上が賑やかになります。さて、ではいただきましょう! と手を合わせた瞬間…

何とも無情なことに、目覚まし時計が鳴りました。一口も食べてないのに!!
今夜、続きを見られないかなぁ…

第61話 カローラ

実家を訪れ、家族で一緒に山へ。しかし、そろそろ古くなってきている車であるため、運転していてもちょっとしんどさが目立ってきています。特にサスペンションも限界っぽいし、エンジンもパワーが出なくなってきています。

途中で合流したTOKIOメンバーからも、

「やっぱり、そろそろ新しい車に買い直す頃じゃないかなぁ」

と言われ、山口達也、国分太一に案内され、妹と一緒にカローラのお店へ。一応、実家でも使える様にという条件付きで様々な車種を見て回るのですが、とにかく高い。いや、思ってたのと桁が1つ違う。

「いやぁ、最近の車はこんなもんっすよー」

とか、軽く言われるけど、3000万円のカローラっておかしいだろ?! 私が知っている車って、300万円くらい出せば、十分買えるんですけど?

妹からも

「いやー、だって兄ちゃんさ、最近の車はネットワークにも繋がるし、自動運転もついてるし、○○も××もついてるから、そんなもんになるけどなぁ」

とか言われる始末。いや、そんなことはない。それを追加で付けたからって、価格が10倍になるのはおかしいって!

というわけで、TOKIOメンバーや妹の説得を振り切り、

「とりあえず1000万円を超えた場合は、両親とも相談しないとダメだから」

と言い残してその場を後にしました。うん、間違いなくおかしいから。夢だったけど。TOKIOが出て来たのは、たぶん「鉄腕DASH」の影響だな。