ある時、僕こと、大越裕一が研究室に入ると、研究室の教授である森本武彦と技官である井手純一が何やら密談をしていた。彼らは僕が立てた廊下に響く靴音に反応するかのように、あわただしくバタバタと何かを隠したようだった。それを証拠に何やらいつもはそれなりにキチンと整理されている教授の机の上がやたらと雑然としている。
「おはようございます!何の相談ですか?」
と訊いてみたところ、二人はよくある「隠し事反応」をした。
「ああ、君か。」
「いや、何でもないんだ。」
あやしい。何かを隠している。僕はそう確信した。疑わしそうに二人を見やると、そっぽを向いて口笛なんかを吹き始める。しかもこれは「かたつむり」だったりする。色鮮やかな花が咲いているあじさいの葉の上を、かたつむりが這っている姿が目に浮かんだが、
(梅雨にはまだ早いな)
という感想を持っただけだった。たぶん来月行われる反射望遠鏡の再メッキ作業の準備で、メーカーとの交渉ばっかりやっているので、頭はすでに梅雨モードなのだろう。気の早い話だけど。
だがその雰囲気をうち破ってまで「何をしようとしていたのか」を質問をしようかどうか、迷った。
「触らぬ神に祟りなし」
という言葉が僕の脳裏を横切ったからだ。これはこれまでの決して短くはない研究室生活から学んだことだ。
その時、応接セットの上の書類に紛れて、プライベート宇宙望遠鏡(PST)サービスミッションのパンフレットと「特注カメラ承ります!」というチラシが目に入った。どうやらあれが今回のネタらしいことはわかったが、不覚にもつい口をついて言葉が出てしまった。
「あれ?この間打ち上げたPSTに新しいカメラをつけるんですか?」
「ぎくっ!」
二人の上に大きな吹き出しが見えた様な気がした。冷や汗でびっしょりになっている。僕は自分が地雷を踏んでしまったことを察知した。
(ダメだ・・・踏んじまった・・・)
僕はいきなり岐路に立たされたことを悟った。これまでも様々な経験をしたが、このパターンに陥って逃げ切れた例はこれまで無かった。いや、正確には
「大丈夫だろう」
と思った事もあったが、気が付かないうちに巻き込まれてしまっていた後でしかなかったりとかである。しかしいろいろと問題の多い研究室なのに、よくもまぁここまで付き合っているよなぁ、と自分の忍耐力に感心したりもする。
が、今はそんなことに感心している場合ではなかった。今回こそは何が何でも逃げ切らないと。
(今度は特注のカメラか。そう言えばこの間国立天文台の野崎さんや大森さんと話をしたとか言ってたな。何かの共同観測なのかな?)
それにしては変な話だ。共同観測なら堂々とやっても問題はないはずなのに・・・
「何か隠してますね?」
「ぎくぎくっ!」
あ、やっぱり。
「もしかして、国立天文台からの予算を他に流用しようと思っているとか?」
「あ、いや、大越君、そのぉ・・・」
「そんなことはないぞ。本来の目的とはちょっと違うこともやらせようと思っているだけで・・・」
「そうそう。共同観測はちゃんとやるし、その後はカメラをどう使っても、我々の勝手のはずで・・・」
「なーに、国立天文台に返すまでの間はいいし、それに一旦PSTに取り付けちゃえばこっちのもの。しばらくはうちが使えるようになるわけだ。はっはっは。」
なるほど、読めたぞ。国立天文台から「地上からの観測用」に期間限定で借りたカメラを無理矢理PSTにくっつけ、何かと理由をつけてガメてしまおうというわけか・・・
方針は決まった。こんな話は諦めさせないといけない。こんなことに関わったとあっては、今後の就職にも影響しかねない。
「でもそういうのは違法なんでは?」
「・・・・・・・」
盛り上がっていた二人だが、その一言に沈黙した。お互いに顔を見合わせ、どうしようかと目で相談をしているようだ。
「そうですよ。大体国立天文台から援助を受けられるってなかなかないんですよ。今回はちゃんと応対していただかないと、あとで困ることになるんですから。」
「そうそう、その通り。そんなことしちゃダメですよ・・・って、チッチさん、いつの間に現れたんです?」
「えーとぉ、『PSTに新しいカメラをつけるんですか?』ってあたりかしら?」
「・・・・・つまり、ほとんど最初から聞いてらしたんですね?」
「あら、そうなるの?」
いつもいつも思うことだけど、いつの間に現れるんだろうか、この人は。
「樋口くん、今回は違うんだ。そのぉ・・・PSTにカメラを積むのは国立天文台の野崎さんからも頼まれてて・・・」
「本当ですかぁ?」
思わず僕は疑わしそうに言った。そういう顔もしていただろう。これに対する教授の反論は意外だった。
「その通り!実はここだけの話なんだが、国立天文台でもちょっとした研究のためにPSTを打ち上げる計画があるらしい。ところがだ。あんなに大きな地上望遠鏡を持っていて、しかも宇宙望遠鏡まで運営している国立天文台が誰にでも買える廉価版みたいなPSTを使うわけには、なかなかいかないらしい。」
「まぁ、まっとうな話ですね。でもコンピューターと同じように考えれば良いのに・・・」
「まぁ、そこまでは私も知らん。とにかくPSTは打ち上げたい。しかし、反対する連中を説得するにはPSTの能力を示す必要がある。」
「で、うちの研究室なんですか?」
「そうだ。国内でPSTを運用しているのはうちだけだ。しかしカメラも汎用だから、得られるデータもそれなりでしかない。」
「で、国立天文台から借りる『地上用』と言われているカメラを改造してPSTに積んでしまえ、と?」
「そうだ。野崎さんからはOKをもらっている。あとは彼が如何に天文台の監査をごまかすか、だ。」
横で頷いていた井手さんも一言付け加えた。これがまさかチッチさんを教授側に引き込もうとは・・・
「それに、このカメラは将来的に我が大学に移管されることになるし、今回のPSTの成果如何によっては、来年以降天文台からの研究費助成があるかもしれないというおまけ付きだ。」
「井手さん、それ本当?もしそうなら、教授、井手さん、そして大越くん、頑張ってくださいね!」
それだけ言うと、チッチさんは隣の部屋に引き上げていった。
「え?」
そこには半分呆然とした状態で取り残された僕と、嬉しそうな表情の教授と井手さんがいた。
しばらく意識がなかったかも知れない。喜びを十分に分かち合った二人が話しかけてくるまでは。
「・・・・・・・・ないんだよ、大越くん。」
「・・・はい?何かおっしゃいました?」
「あ、いや、だから、今後の打ち合わせをしないといけないんだって。」
「あ。ああ、打ち合わせですね。えっと、サービスミッションの手配ですね、まずは。」
「ああ、よろしく頼む。それと井手君くんはカメラの改造を。」
「任せてください!」
井手さんは元気良く応えた。
一週間後、サービスミッションの日取りは決まった。井手さんもそれまでには十分組み上げられるらしく、
「念入りにテストしておくよ」
と言っていた。たぶん、普段はやらないくらい激しい振動実験や、過酷な温度変化を与えるに違いない。なんか新しい合金を手に入れたとか言っていたから。
そして観測計画も立てられた。国立天文台側からのリクエストは、近傍恒星のスペクトル・カタログの作成であったから、分光観測が主になる。出来る限り多くの恒星のスペクトルを観測し、どの恒星にどんな元素がどれくらい含まれているのかを、全てカタログにしてしまおうというのだ。なかなか壮大な計画で、国立天文台だけでは手に負えないから日本の天文学関係の研究室に呼びかけて、出来る限り多くの望遠鏡で短期間に作り上げてしまおうと言うのだろう。
そこを隠れ蓑にして、今回はPSTの精度実験までしようってわけか・・・で、もしこれがうまく行った暁には、国立天文台も独自にPSTを打ち上げようって魂胆なんだろう。大気圏外なら暗い天体まで、大気の影響を受けずに観測できるから、精度の良い結果が得られる。いわば、国立天文台の思惑と教授の思惑が一致したから今回の話になった訳か。
しかし解せない。いくらカメラがタダでもらえるとは言っても、教授がそれだけでこの話を引き受けるとはどうしても思えない。なにかまた変な理論を考えついて、それを確かめるのに丁度良いと思ったんじゃないだろうか?
危惧は当たっていた。そのことを教授に訊いてみたら(もちろん、『変な理論を思いついたんじゃないですよね?』とは言わなかったが)、やっぱり何か考えていたようだ。教授は嬉しそうに解説を始めた。
「いいかね。星雲の中で星が誕生する時のことを考えてみよう。」
「プレアデスとか、ヒアデスみたいにですか?」
「そうだ。まぁ、オリオン大星雲でもいいが。この場合、まったく同じ重さの星ばかりが生まれるのではなく、様々な重さの星が生まれてくる。その度合いは・・・」
「それぐらいは知ってますよ。イニシャル・マス・ファンクションに沿うわけでしょ?」
イニシャル・マス・ファンクション(IMF)は、ある量のガスがあった場合に、どれくらいの重さの星が何個ぐらいずつ出来るかを表した関数で、通常は星の重さのベキ乗で書き表される。このベキの値を観測から求めるのだが、有名な物としてはサルピーターのものと、スケーロのものがある。今ではこの二者を基本に、宇宙望遠鏡や公転軌道天文台で得られたデータを付加して、求められている。
まぁ、それはいいのだが、何が新しい理論なんだろう?
「こうして生まれた星達はだんだん離ればなれになっていく。いずれ我々の太陽のように、同じ星団から生まれたものとも離ればなれになって、単独で生まれたかのようになる。」
「はぁ。まぁ、公転周期が少しずつ違いますから、五十億年もすればバラバラになりますけど・・・」
その言葉を聞いて、教授は「ふっふっふ」とイヤな笑い声を出した。あ、また何かたくらんでるな。そうか、ここが今回のミソなのか。絶対ロクでもない内容に違いない。
「そう。同じ所に生まれ、銀河系内を公転していくうちにはぐれる・・・そして何十、何百公転の後に、再び巡り会う事もある。同じ学校に通った同級生同士がたまたま町中で出会うときのように。まるで人生のようではないか!」
隣で井手さんが「うんうん」と大きな素振りで頷いている。ははぁ、この二人の間では、すでに合意が出来てるんだな。
「そう!久しぶりに会えば、思わず喫茶店に行ったり、飲み屋に行ったりして、積もる話もするだろう。場合によっては・・・」
「きっと友情や恋の炎が燃え上がるんですね!」
井手さんが盛り上がる。ダメだ・・・またいつものパターンじゃないか。
そんな僕の思いを余所に、教授は話を続ける。
「そうだなぁ・・・いや、きっとそうに違いない!もしかしたら相手が初恋の星だったりすると・・・」
「で、その燃え上がった友情だか恋だかは、どういう形で現れるんです?」
ちょっと水を差してみた。このまま訳の分からない世界に突入するのだけはイヤだったからだ。
「初恋の星」
って一体何なんだ?大体星に意識なんてあるのか?僕なんか高校の時の片思いの相手だった・・・あ、いやいや、そんな話じゃなくて、そもそもIMFの話はどこに繋がるんだ?僕の疑問は尽きなかった。
話の腰を折られた教授は、一瞬イヤそうな顔をしたが、「コホン」と一つ咳払いをすると、僕の疑問に応えてくれた。どうも、柄にもなく「初恋」なんて言葉で盛り上がったことを反省したらしい。
「良い質問だ、大越くん。当然の事ながら、自分の意志を表明する行動を取るだろう。」
「『GF理論』の時みたいにですか?」
「まぁ、あれはまだ検証が出来ていないが・・・。例えば、相手が好きな人だった場合には、人間の場合、心臓がドキドキするだろう?星の場合は変光星になるとかだなぁ・・・そういうことが考えられるわけだ。」
なんか、恒星の進化論に思いっきり反する話を聞いたような気が・・・・・きっと気のせいだろう。
「他にもジェットを吹き出すとか、表面で大きなフレアを起こすとか。いろんな活動をするに違いない!」
ああ、幻聴が聞こえる。これまで定説と思っていたことをことごとく覆す話が耳から入ってくる。しかも全く根拠のない、戯言としか思えない内容が・・・
頭の中に
「よっ!久しぶり。元気だった?」
とか何とか言ってフレアを吹き出す恒星が浮かんだ。何とかこんなバカみたいな話は止めないと。よし!
「人間の場合は、好きな相手ばっかりとは限りませんよね?嫌いな相手だったらどうするんですか?」
「君ならどうする?」
「え?そりゃあ、忙しいことにして、『また今度』とか言って逃げますけど・・・」
「だろ?星だって逃げるのさ。」
あああ、頭が痛い。しかも割れるようにだ。しかもそこで井手さんがすかさず頭の痛い話を引き継いだ。
「つまり、あれですね?今回は『同期の桜』理論とも呼ぶべきものなんですね?」
「うーん、『同期の桜』理論かぁ・・・いいね、それ!」
耳鳴りもしてきた。やっぱりロクでもない話を考えていて、しかもそれにまたしても巻き込まれたわけだ。しかも今回は国立天文台がらみで、チッチさんも教授達の肩を持っているし・・・
(『四面楚歌』って、確か『四方全てから、敵国である楚の国の歌が聞こえる』という状況から来たんだっけ・・・あ、楚の国の歌ってこんな歌だったんだ。)
などと、頭は逃避行動を取っていた。
しかし僕のそんな思いは彼らには通じなかった。
「それでだな、今回の『スペクトル・カタログ制作プロジェクト』に参加したわけだよ。『同期の桜』かどうかは、スペクトルからわかる。同じ星雲内で生まれた恒星同士は、その表面に於ける元素の含有率が似ていることが知られているからね。カタログが完成したら、『同窓会』が開かれている場所も明らかになるし、そこでどんなことが行われているのかもわかるだろ?」
そうかそうか。それで今回のプロジェクトに参加したのか。ようやく魂胆がわかったぞ。
でも考えようによっては良い話だった。「同期の桜」は置いておいても、「スペクトル・カタログ」は大変重要な示唆をもたらすし、「同窓会」が行われいる場所はともかく、「同級生」は見つけられるだろうから、そこから銀河系の形成・発展史が構築できるかもしれない。もしそんなことが出来れば、それはそのチームの大きな成果として、後世にまで残るに違いない。
その名誉欲だけに支えられて、僕はサービスミッションも全て上手く終わらせた。いや、僕がやることはそんなにないのだが、指示だけはしっかりと出さないといけないから、気を抜けない作業だった。途中頭痛と耳鳴りに何度も悩まされたが。
そして恒例のテスト観測。解析ソフトのチューニングが一部必要であった(どうもベースがMIDAS系だったらしい)が、これもうちの研究室でも日米共通のIRAF系を使っているからだった。どうやらヨーロッパでやった別の観測の時のオートプログラムをそのまま持ってきていたらしい。まぁ、あとで相互変換しても良いんだけど、どうせなら最初からそっちで解析した方が気持ちいいしね。他の研究室の連中にも教えたら、「是非くれ」というのでルーチンを分けてやったら、このプロジェクトの標準パッケージに指定されてしまった。これも予想外の出来事だけど、嬉しいものだった。
一ヶ月も経つ頃にはそれなりに結果も上がってきていた。自動化されたルーチンは、うちの研究室に割り当てられた観測領域に含まれている恒星を次々と撮影し、スペクトルを吐き出していた。それを解析ソフトに入れ込めば、これも自動的に各元素の輝線・吸収線を割り出してくれる。良いことに、黒体放射のピークの位置から表面温度も計算してくれるし、ついでに温度がわかるから元素の存在量までも計算してくれる。マニアックなところでは、各元素の運動の様子も線の広がりから求められた。これらのことを今世紀初頭までは全部手で作業をしていたと言うから、驚きだ。
何と驚くべき事に、うちの研究室が担当していた領域からも、他の大学から回ってきたデータからも、教授の言う「同窓会」が行われているところが出来てきた。いくつかはあるだろうとは思っていたが、こんなに早く結果として現れるとは・・・教授と井手さんは喜んで解析をしていた。僕はと言うと、例のIRAFベースに書き換えたルーチンのヴァージョンアップや何かの仕事が国立天文台から舞い込み、手伝える様な状況にはなかったが、その一方で怪しい理論に付き合わなくても良いということで、しんどい作業ではあったが、楽しくさせてもらっていた。もっとも、チッチさんの目が時々冷たく見えたことも事実だが・・・どうやら教授達を止める役を求めていたらしい。
ある時、チョット時間が空いたときに、僕は教授に呼ばれた。そこには井手さんもいて、何やら困ったような顔をしていた。何となく理由は想像できたが、一応訊かずにはいられないような雰囲気だった。
「どうしたんですか?」
「大越くん、それがな・・・言いにくいことなんだけど・・・」
「例の『同期の桜』理論の件ですか?」
二人は首を縦に振った。やっぱり。たぶん何にも出なかったから、がっかりしているんだろう。
と思ったら、実は話は急に変な方向に向かっていった。
「実はな、理論を裏付ける兆候が幾つか見つかったんだな、これが。」
「え?見つかったんですか?!」
何で見つかるんだ、そんなもの?!あ、待てよ。もしかしたらよくある「期待して見ると、実際にはないものが見えてしまう」という有名なあれなんじゃあ・・・いや、きっとそうに違いない。
「という訳で、あと実例を百件も集めれば、論文に出来る。ところが実例が足りなくてね、より遠い星や、より暗い星までを写す必要が出てきたんだが、感度不足で写らないんだ。」
「そりゃ、いくらなんでもPSTにも限界がありますから・・・」
教授は身を乗り出して、誰かも見られていないのを確認してから小声で話しかけてきた。
「そこでだ、自前でもう一回サービスミッションを行いたいんだが、なぁ、協力してくれんか?」
「もう一回やるんですか?そんな予算ないですよ。それにチッチさんがなんて言うか・・・」
「だから密かにやろうと思ってるんだよ。」
「でも・・・」
「教授が山田さんのところで連載している記事の原稿料を全て提供してくれたら、OK出しますわ。」
「ぎくっ!」
振り返ると、そこには腕組みをしたチッチさんがいた。仁王立ちになって、こちらを睨んでいる。井手さんはいつの間にやら部屋の隅っこに退散して、小さくなっている。すでに睨まれていたらしい。
「教授、もう既にカメラを作っちゃったんですってねぇ・・・私に内緒で。ここまでやられたんでしたら、最後まで付き合ますわ。」
「え、いや、それは助かる・・・」
「そのかわり!理論が証明できなかったら・・・三人とも覚悟しておいてくださいねっ!!」
ゴクリ。教授と井手さんがつばを飲み込んだ。もしかしたら僕もかも知れない。それくらいの迫力でチッチさんは迫ってきていた。しかも何故か僕も共犯者になっている。
(何故だ~っ!)
その叫びは誰にも届かなかった。叫ぶことすら出来なかったからだけど・・・
というわけで、僕たち三人は今、サービスミッションの準備をしている。理論の証明に失敗したとき起こるであろうことに、恐れおののきながら・・・
「あんな理論、証明出来るわけないだろぉぉぉっっっ!」
打ち上げの前日、僕の叫びは、発射場の管制室内にむなしく響き渡った。しくしく・・・